JSPS143WS25「制御性能監視」最終報告書について

最終報告書の一般公開に際して

2002年,日本でも制御性能監視技術がプロセス産業界で注目されるようになりつつある中,日本学術振興会プロセスシステム工学第143委員会内において,「制御性能監視〜プロセス産業での実用化を目指して〜」というテーマでワークショップ No.25 を立ち上げました.2002年から2004年までの約2年間の活動を終えるにあたり,我々の活動成果をまとめた最終報告書を作成しました.

プロセス制御分野では,随分と前から,制御性能監視や制御性能評価に関する研究が進められており,ジャーナルや国際会議等での議論も活発に行われてきました.また,海外の企業からは,制御性能監視を実施するためのソフトウェアも複数販売されています.最近,日本国内でも,計測自動制御学会誌の特集号で制御性能監視関連の話題が取り上げられるなどして,制御性能監視への関心が高まってきているようです.特に,省人化と生産性向上を要求される製造現場では,ニーズに応える技術として,制御性能監視が注目されています.

このような状況をふまえて,ワークショップの活動成果をできるだけ多くの方々に活用していただくために,最終報告書(一部を除く)を一般公開することにしました.プラントに存在する膨大な数の制御ループの性能を簡単に評価したい方,プラントのボトルネックとなっている制御ループを発見したい方,運転データのみから調節弁固着の有無を判定したい方,そんな方々に最終報告書を読んでいただければ,きっと役立つ情報が書かれていると思います.

最終報告書に加えて,本ワークショップで開発した『制御性能診断ツール LoopDiag』も一般公開することにしました.Windows上で動作するスタンドアロン型ソフトウェアですので,興味のある方は活用して下さい.制御性能評価や調節弁固着診断などの機能が初心者でも簡単に使えるようになっています.

"JSPS143WS25"とは?

ワークショップ概要 (提案書より)

資源,環境,安全,品質,価格など,生産活動を行う上で考慮しなければならない項目の数は増加するばかりであり,グルーバル化を背景に,突き付けられる要求も際限なく厳しくなってきている.このような時代の要請に応えるためには,化学プラントの能力を最大限に引き出すような運転を実現しなければならず,制御系の性能を高く維持することが最低限必要である.しかし,一般的な生産プロセスには非常に多数の制御ループが存在し,どの制御ループがプラント全体の運転効率向上へのボトルネックであるかを見極めることは大変困難である.また,気温の変化,銘柄やロードの変更,触媒の劣化,伝熱係数の変化など多種多様な要因によってプラントの状態は時々刻々と変化するため,一度調整したコントローラであってもその制御性能が劣化している場合も多く,時にはその悪影響がプラント全体にまで及ぶこともある.そればかりか,調整もされないままに使用されているコントローラも少なくないのが現状である.近年では,モデル予測制御に代表される大規模な多変数制御を導入し,高度な運転システムを構築する事例も増えているが,それが計画通りの性能を発揮しているかどうかを常時監視し,必要に応じて再調整を行わなければ,高価なシステムが無駄となりかねない.このため,再調整を必要とするコントローラを検出する目的で,各制御系の性能を評価できるシステマティックかつ実用的な手法が必要である.さらに多変数制御系では,プラントの状態変化に適応するために,プロセスモデルを再同定する必要があるかどうかを判定できる手法の開発も望まれている.

本ワークショップの目的は,実用的な制御性能評価・監視手法を提供することである.そのために,そもそも制御性能の善し悪しとは何なのかという原点から議論を始め,これまでに提案されている各種制御性能監視手法を整理し,シミュレーションデータおよび実プラント運転データを用いた各種手法の評価を行いながら,我々が取り組むべき問題を明確にする.例えば,最小分散制御を規範とする制御性能評価手法は,この分野の先駆的な研究として高く評価できるが,むだ時間の正確な同定が必要であると共に,実現不可能な制御性能をベンチマークにするという問題点がある.実用的な制御性能評価・監視手法を開発するためには,産業界におけるニーズを的確に把握し,厳しい目で既存技術を検証する必要がある.本ワークショップでは,産学からの参加者が共同し,かつ適切に役割を分担して課題に取り組み,様々な立場の参加者がその成果を享受できるような方向で作業を進める方針である.

活動内容

本ワークショップでは,参加者の議論に基づいて,以下のような活動を実施した.

  1. 産業界におけるニーズ(制御性能監視の理想像)の調査
  2. 既存手法のサーベイ(文献・企業での実施例を調査)と評価(解析を実施)
  3. 実用的な制御性能評価・監視手法の開発
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最終報告書

最終報告書の概要

最終報告概要 [PDF 0.8MB]

日本学術振興会プロセスシステム工学第143委員会の最終報告会で使用した資料とスライドです.一部編集しています.

最終報告書

最終報告書全体 [PDF 21.1MB]

最終報告書の全体です.以下の3部で構成されています.

制御性能診断ツールボックス LoopDiag

ワークショップ No.25 で開発した制御性能診断ツールボックス LoopDiag を公開します.

マニュアルに記載した使用条件を承諾していただければ,どなたでも利用していただけます.

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第1部 ワークショップ活動記録

第1部 目次

第1部の各項目詳細を見る

第1部全体 [PDF 1.5MB]

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第2部 研究・技術動向調査

第2部 目次

第2部の各項目詳細を見る

第2部全体 [PDF 10.8MB]

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第3部 制御性能監視と関連技術の実用化に向けて

第3部 目次

第3部の各項目詳細を見る

第3部全体 [PDF 8.9MB]

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制御性能診断ツール LoopDiag

内容

制御性能診断ツール LoopDiag の詳細を見る

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